Photography:Tadayuki Minamoto  2015年 11月

花のこえ

鬼の入れもの

古代より、食用、器、楽器、装飾、祭具
と重宝されていた瓢。
瓢は自然の姿そのままで、
いろいろな役割を果たしてきた。
「西遊記」では、
宝具のひとつである「紅ひさご」が、
三蔵法師一行の行く道をふさごうと
する銀角大王を吸い込んで、
退治するお話である。
瓢の中空に鬼が入っている。
聖邪はいつも一緒に在る。
三蔵法師一行に試練を与えた鬼は、
その役目を果たすと童子の姿になって
瓢から出てくるというのが、
このお話の有難いところなのである。

花器:若杉聖子
花:四季咲杜若

Photography:Tadayuki Minamoto  2015年 10月

花のこえ

垂抵の花

「垂」の字を見てみる。
たれる、ほどこす、
後世に伝える、国土の果て、
草木の垂れさがる様、
まさに及ぼうとする義、
などと出てくる。
「垂掛之治」とは、天子の徳により
無為にして世が治まること。
平和は、知や欲が
過ぎないところにある。
真に向き合って、最後の結果は
天に任せて昼寝でもしようか。
そんな花をしたい。

花器:「滝の瓶」 荒川尚也
花:コエビ草

Photography:Tadayuki Minamoto  2015年 9月

花のこえ

両忘

兵庫県丹波市青垣町に古刹あり。
山門から身が引き締まる生気あり。
天目楓、巌、妙音、清風が
迎えてくれる空間で、
縞貫織と花がすぐ仲良しになった。

過去も未来も離れた今を、
人がひたすら紡いでいく時間は
何よりまさる力となり、
その土地の文化となる。
こんなにも美しく最強の力を、
日本はたくさん持っているのである。

花器:丹波布、高源寺
花:槿

Photography:Tadayuki Minamoto  2015年 8月

花のこえ

鉄の島

種子島は鉄の島。
砂浜は、山から流れた砂鉄の
黒い砂とマーブル模様になっている。

この土を焼いたら、
思いがけない姿に窯変したという。
なるほど野趣に富みながら、
どこか優雅でもある。
器に水を入れると、はげしくよろこんだ。
花を入れると、すっと静かになって堂々と
本来の姿を見せてくれた。

土器:野口悦士
花:月桃

Photography:Tadayuki Minamoto  2015年 7月

花のこえ

名もなきモノ

産まれたての赤ちゃんに
名前はない。
名もなき赤ちゃんが見る、
この世のすべてのモノに
名前も、隔てもない。
こんな赤子のような心を、
赤心という。

一本の木が、分解され、
形作られ、名前がついて
世の中に、物として存在する。
物と赤心が結ぼれ、
美となり文化となる。

漆器:笹井史恵
花:かなめもちの新芽

Photography:Tadayuki Minamoto  2015年 6月

花のこえ

Love for all

光はひかりに集まり、闇はやみをいっそう深くする。
種々の激しい情熱と物質が坩堝に溜まり、
ぐるぐる渦巻きながら溶かされていく。
すべて極まって、何も無くなったとき、
物は、光を透す生き物となるのか。

ガラス:三嶋りつ江
花:フキノトウ

Photography:Tadayuki Minamoto  2015年 5月

花のこえ

○・△・□

まるは、いつでもどこでも変わらない真理。大自然。
しかくは、とらわれた心。ちいさな枠。社会。
そして、さんかくは大自然と一体となった姿。日々。

丸い盆、四角い盆は、同じ木から作られている。
人も「ほら、一歩踏み出してみて。大丈夫でしょう?」と、
シダの葉が表と裏を見せて教えてくれました。

盆:佃 眞吾
葉:ウラジロ(シダ植物)

Photography:Tadayuki Minamoto  2015年 4月

花のこえ

柔らかな太陽

四月は万物が極めて盛んになる。
暦では夏に近い。
赤々とした柔らかな太陽の色。
まだ見ないモノを見ようとする。
作家のまなざし。
静かに。
その開くときを待っている。
大人の「陽」である。

器:岩田圭介「ココナッツ鉢」
花:グレビリア